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ふるさとの土を踏む(鹿屋市) 



私はご先祖のお墓参りに季節の花を抱きかかえて、

自宅のある鹿児島市の桟橋から船に乗り、

桜島を眺めながら鹿屋市に着いた。

子供のころよく通っていた中心地の繁華街は、

もう昔の賑わいはなくなっていた。

タクシーでお墓まで行き、

木立の生い茂る隙間から見る太陽のまぶしさは、

幼少のころ見たそのままの光景だった。

子供のころ母の袂にすがりながら、よくきた場所でもある。


父ちゃん 母ちゃんと心の中でなんど叫んでも返事がない


木立の中から可愛い小鳥たちが返事をしてくれているような

そんな気がしてきた。

私は無意識に 隙間から見え隠れする空を見上げていた。

まさにこの場所こそが、人間が原点に戻れる随一の場所であ

る。

だから大事な大切なふるさとなのである。

優しいまなざしのタクシーの運転手さんは、

まるで自分のご先祖のお墓参りに来たかのように、

遠慮をする私の言葉などそっちのけで、手際よくお手伝いを

してくださいました。

又船の中でお知り合いになったご家族のお言葉に甘えて、

鹿屋市の町まで車に乗せていただき、

まだ喜びが消えないうちに、今度はご親切なタクシーの運転手

さんのこころ温かいおもてなしに感謝して、私はふるさとを後に

しました。

船が鹿児島港に着くころには、もうすっかり日は暮れて、

桜島がぼんやりとかすんで見え、

鹿児島市のネオンサインが、まるで新たな一歩を踏み出すか

のように新鮮な気持ちにしてくれました。 

ありがとうふるさとよーー気持ちのいい里帰りでした。
 


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国内の旅 目次

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    エッセイ集目次

1 私の日常生活

2、薩摩おごじょ

3、国内の旅


4、海外の旅

5、自転車日本縦断の旅

6、普賢岳の千羽鶴

7、阪神淡路大震災

8、私の服飾観


9、命が延びる食生活

10、思い出は霧に包まれて

11、世界で一番大好きな


12、高隈山 戦争


13、松竹梅 一本松