私はご先祖のお墓参りに季節の花を抱きかかえて、
自宅のある鹿児島市の桟橋から船に乗り、
桜島を眺めながら鹿屋市に着いた。
子供のころよく通っていた中心地の繁華街は、
もう昔の賑わいはなくなっていた。
タクシーでお墓まで行き、
木立の生い茂る隙間から見る太陽のまぶしさは、
幼少のころ見たそのままの光景だった。
子供のころ母の袂にすがりながら、よくきた場所でもある。
父ちゃん 母ちゃんと心の中でなんど叫んでも返事がない
木立の中から可愛い小鳥たちが返事をしてくれているような
そんな気がしてきた。
私は無意識に 隙間から見え隠れする空を見上げていた。
まさにこの場所こそが、人間が原点に戻れる随一の場所であ
る。
だから大事な大切なふるさとなのである。
優しいまなざしのタクシーの運転手さんは、
まるで自分のご先祖のお墓参りに来たかのように、
遠慮をする私の言葉などそっちのけで、手際よくお手伝いを
してくださいました。
又船の中でお知り合いになったご家族のお言葉に甘えて、
鹿屋市の町まで車に乗せていただき、
まだ喜びが消えないうちに、今度はご親切なタクシーの運転手
さんのこころ温かいおもてなしに感謝して、私はふるさとを後に
しました。
船が鹿児島港に着くころには、もうすっかり日は暮れて、
桜島がぼんやりとかすんで見え、
鹿児島市のネオンサインが、まるで新たな一歩を踏み出すか
のように新鮮な気持ちにしてくれました。
ありがとうふるさとよーー気持ちのいい里帰りでした。
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