● その昔カシミールは、ムガール皇帝時代には避暑地として知られておりま
した。そして最高級品のカシミヤショールや絨毯などは17世紀から18
世紀にかけてヨーロッパで大流行いたしました。西欧の宮廷文化は最盛期で
あり、王侯貴族達が富と権力の象徴としていたカシミヤショール は宝石など
と同等に重宝されていました。
私がこの最高品質であるカシミヤの話を聞いたのは今から12年ぐらい前の
ことです。東南アジヤを冒険していた息子が滞在していたインド最北部のジャ
ンム・カシミール地方。
そこは地球の屋根とも言われているヒマラヤ山脈の美しい山々に囲まれた夏
は涼しく冬は真っ白な雪が降り、一昔前までは世界中から大勢の観光客が訪れ
ていたことでも知られております。
● そのはるか遠い国北インドから息子が一枚のカシミヤショールを私の誕生日
に送ってくれました。そのカシミールショールの暖かさと美しさに私は舞い上が
るかのように喜んだものです。
この柔らかさ、絶妙な色彩のバランス、埋め尽くされた精巧な豪華なマンゴー柄
の手刺繍(生命の幹とも言われているマンゴー)。
それは風合いが柔らかくて軽くとても保湿性があります。
そしてまず気の遠くなるような手作業をなさった職人さんに心から感謝いたしま
した。同じアジア人として言葉に言い尽くせないほどの喜びもこみ上げてまいり
ました。
波乱万丈の中にいる親子そして旅の道中での出会いとご縁、それは明日への希望
の旅になるのかもしれません。
●本格的な冬が到来する前に山羊たちは牧草地
から渓谷のほうへと移動します。それにカシミヤ
山羊が生息する地区や気候によって毛の密度も
かなりの差が出てくるといいます。生産高が少な
いために原料の毛には大変な希少価値があります。
そしてその産毛で織られたものが最高品質パシュ
ミナです。たった1枚の総刺繍のショールを完成
するのに5年くらいかかることもあるそうです。
だが、かつて平和な楽園であったカシミールは現在紛争の舞台になってしま
いました。美しい高地カシミールが平和を取り戻せるように切に願いたいと
思います。
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