私は若いころデパートに九年ぐらい勤務しておりました。東京、大阪、鹿児島で

す。その内の六年間は実は東京に本社をもつ有名な眼鏡売り場でした。私のお仕

事は販売、事務、雑用、そして大学病院から眼科の先生が来店しない日は私が代

わりに検眼をしておりました。

そんな頃の私は青春時代のまっ最中でもありました。それに仕事の仲間が全員男

性でしたので、一番大切なコミニケーションがしっかりと取られていた売り場で

もありました。それで毎日が活気に満ち溢れて、仕事が楽しくって仕方がありま

せんでした。それに客層がまた良く、たとえその日に買って下さらなくても私は

最初と最後のアプローチをとても大切にしておりました。

平成２５年２月撮影　ポンチャン

その眼鏡売り場にあのフランスのパリ出身の女優ブリジット・バルドーさんの大

きな写真が飾ってありました。そのあどけないキュートな顔立ちに大きなサングラ

スをかけたチャーミングな表情のバルドーさんの写真を私は何年も目にするわけ

ですから、私はすっかりバルドーさんの虜になって行く自分がそこにいました。

私が２２才を過ぎた頃の思い出話でございます。

私もバルドーさんのように可愛くなりたいーー？

毎日事務をしながら横に飾ってあるバルドーさんの写真に魅せられて日を追う事

にウキウキハツラツとした毎日でお仕事をさせていただきました。

仕事にも慣れてきた頃から私とお話をしたくって、カウンターの前には毎日のよう

に若い学生さんや社会人の男性の人たちがやってきておりました。

「売り上げは凄く上げるし毎日カウンターの前にはポンチャンに会いに来る男の人

たちがやってくる。」と言われておりました。　

ポンチャンの字がついた頃です。

そんな私は大きな目を輝かせながら、ブリジッ ト・バルドーさんのサングラスの

すばらしさに熱意を込め過ぎ、サングラスをかけては笑い、本当にお客様とは

近親感でお仕事をさせて頂きました。眼鏡も良く売れそして顕微鏡や望遠鏡など

もよく売れました。べっ甲の高級眼鏡が売れたときの喜びはひとしおでした。楽し

みながら仕事をするなんて、あの頃の私は贅沢 すぎるほど幸せでした。そして隣町

からは姉妹などがやってきては時計を買ってあげたり、又洋服を買ってあげたり

してお互いに喜びました。

あの方がた今どうしているのかしらーー？医者になると言っていた学生さんや

サラリーマンの方達。私が突然退社してからも何度も売り場にいらして、私の事

を尋ねられたというアナンサー志願の学生さん。 ５０００トンのセメントを積ん

だ大型船が上陸するたびに舶来品の香水などをお土産に下さいました今言葉で

イケメンの方。街中で外国の人たちに囲まれて 恐くなって飛び上がるようにし

て逃げた思い出。或る地主さんが大きなタイのお魚を下げてデパートの入り口に

待って私に下さったので、私はその大きなタイ のお魚を抱きかかえて街中をよ

ろよろ歩いて帰った夕暮れ時。デパートに外国からやってきていた宝石商人のお偉

いさんとの文通。そして今は亡き親孝行の時計商人の方から金メダルと銅メダル

のプレゼントをしてもらったあのうれしかった日。そして沖縄の教育に携わっていら

した方からＰＡＲＫＥＲのペンのプレゼントを頂いた日。先生は私にこうおっしゃ

いました。

「戦争から帰ってきたら妹が銃で手をやられて、押さえながら海に飛び込んだ

と聞きました。」

あの時私は貴重なお話を聞かせていただきました。そして先生の目の検眼をする

とき涙が止まりませんでした。

眼鏡を通じてたくさんのいい方がたに出会いました青春時代。

私の青春はやはり若さと純粋さでブリジット・バルドさんの外枠で動いていたの

かもしれません。そしてなに一つととりえのない私ですが、もしかしたらみんな

に元気を上げていたのかもしれません。

そして時は過ぎ私の部屋には最後の人生を慈善運動に勢力的になさいました。

あの名女優オードリーペップパーンさんの本物の写真が二枚飾られています。

こんな立派な人になりたいーー

私もこんな人生を送りたいーー

今は亡きオードリーヘツプパーンさん。眼鏡も良くお似合いになられ、気品高い

天使のように美しい方。幼い頃悲しみ深くご経験をなさり、弱いところを何一つ

と陰りをお見せにならなかった世界の名女優オードリーヘップパーンさん。

私がもっとも共感を抱いたのは、心底からの慈善運動のお姿はひとりの人間とし

ての肩を張らない自然そのままのお姿でしたね。人間の一番美しいこころの灯火

として受け止めました。

私も今希望から現実近し日を心待ちしている今日この頃でございます。

サングラスとは