長いトンネルを通り抜けて鹿児島県出水市、阿久根市へと立て続けに入った。
33日目、阿久根では知り合いが旅館まで私を訪ねて来てくれた。
だが、私の体調が思わしくなかった。私は夢と希望を膨らませてここまで気力でペタルを踏
んで来た。鏡を見ると肌が真っ黒く焼けているのに気付いた。以前の姿はもはや見る影
もなかった。
国道から見える阿久根の蜜柑園、そして透き通った奇麗な海、私は自転車を下りてこの
広い海と空に見とれてしまった。芝生に腰を下ろして地元の若夫婦からもらった阿久根
蜜柑を口に入れた。その蜜柑はまるで新婚さんのように甘かった。
鹿児島市を目指してスピードを出していたら車の中から、
「ポンチャンご苦労様。」
と声援をかけられた。
突然鹿児島の友人から電話が入った。郡山町の国道に待っておりますと言われた。
市来町・東市来町と入り、三号線を郡山町へ入った。そこにはファンの方たちの懐か
しい顔があった。再会を喜びあった。私は感激で涙がどっと溢れてとまらなかった。
そしてファンの方の車の前を私は自転車で疾駆した。そこは大きな温泉と美味しい
薩摩料理が私の帰りを迎えてくれた。
その頃になると、携帯電話がひっきりなしに鳴り響いた。無事鹿児島県に帰ってきた
ことを祝う電話が次々にかかってきた。薩摩人の人情味に私は心から感謝した。
奇麗な布団で私はすぐに深い眠りに落ちた。
次は、薩摩おごじょ お帰り
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