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 ポンチャン.com   
  
自転車日本縦断


5、危険な思い出


 翌朝出発前、栃木県の黒磯方面に向う為に地図を広げて計画を練った。

市街地を離れて間もなくすると小雨が降ってきた。   
 
レインコートも被らずに、そのまま白河、それから那須高原入り口を通り抜け、紅葉の

高原を想像しながら雨の中をぺタルをこいだが、登り坂が急だったために自転車を押し

て登ることになった。

間もなく黒磯市に入ろうとしていた。ここは山の中の長い上り坂で旧国道である。雨に打た

れて自転車を押してきた私の前方に突然大型ダンプカーが停まった。

中から男が私に向かって何かを叫び、そして今度はそのまま叫びながら車から降りて

私の方へと向かってきた。

そのとき前方から二台の乗用車が下ってきた。この男の前を車が通りかかろう

としているその時、考えるよりも先に先ず私の体が動いた。私は必死で自転車を押して

上り坂を上った。恐怖はもう頂点に達していた。恐さと寒さで体の振るえが止まらなか

った。坂道を登り切った私が、長い下り坂を疾走している時に目にしたのは、沢山の

ダンプカーが停まった休憩場だった。私は国道から農道に入って土手裏に身を隠した。

あのダンプカーが国道を走り抜けるのが見えた。

男は国道から私の姿を見つけたのかまた叫びだしていた。そして私は国道の下を通り

抜けて一軒の店から警察に連絡をした。

雨は激しく降り続けて髪は乱れ、靴はボチョボチョと水を垂らしていた。

パトカーが来た。私が見た男のダンプーカーはすこしグリーンがかっていた。

警察は無線で仲間に連絡した。私はパトカーにガードしてもらい、黒磯市のホテル入り口

まで送ってもらった。男の車のナンバーは見えなかったが、車の色だけはかすかに覚え

ていた。ホテルについても落ち着かなかったが、私は確かに生きている実感が沸い

てきた。





次は、草加市に到着

自転車日本縦断の旅 目次







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     エッセイ集目次

1 私の日常生活

2、薩摩おごじょ

3、国内の旅


4、海外の旅

5、自転車日本縦断の旅

6、普賢岳の千羽鶴

7、阪神淡路大震災

8、私の服飾観


9、命が延びる食生活

10、思い出は霧に包まれて

11、世界で一番大好きな

12、高隈山 戦争


13、松竹梅 一本松