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 ポンチャン.com   
  
自転車日本縦断


9、雨の中を突っ走る


三島にやっと到着した私は国道に入る手前の道沿いで休憩をした。

そこで出会った奥さんが私に温かい鯛焼きをくれた。また走っているときに呼び止められ

て中年の女性に風呂敷をもらった。この街の優しい人の温情を感じ取る出来事であった。


三島から国道一号線に入り沼津へ向かった私は、ルンルン気分で自転車を走らせて

いた。広い歩道でまるで鬼ごっこでもしているかのように心が弾んできた。それは熱海

からの長い道のりにうんざりしたのとは対象的であった。

ところが沼津を過ぎると、自動車の交通量が激しくなり、自転車を気持ちよく疾走させる

ことができなくなった。

そこで国道の下の農道を30キロぐらい駆け抜けて、再び国道へ上がると驚いた。なん

と私は通行禁止のバイパスを走っているのである。

道路の下で仕事している人たちが

「危ないよー!」

と叫んでいたが、どこを見ても下りていく場所がない。もう仕方がない 最後まで走り抜けて

しまえと思った。持ち前の破壊的激情が噴出し、私はオリンピックの競輪のラストスパート

のように全エネルギーを出し切ってダンプカーと並んで走った。

そして新富士川の橋を渡り、右折しやっと旧道へ入った。全身から力が抜けていった。

雨が降ってきた。これで三度目の雨だ。私はびしょ濡れになりながら、海岸沿いを車と並

んで走った。雨は止む気配もない。

熱海から100キロ以上走っただろうか?、気がつくと静岡の中心地にいた。今度はすぐに

ビジネスホテルが見つかった。


翌朝、静岡を後にして浜松へと向かった。

ここに来る途中、大きな山々を越えた。そして大井川 、竜川の川幅の広さに驚いた。

長い橋を渡る時、恐怖で身が縮まるようだった。

静岡はさすがお茶処、お茶の宣伝がいたる所で見られた。

私は日本の様々な風土と文化を身を以って満喫しながらぺタルを踏んでいる。

浜松のビジネスホテルに着く前、また雨が降り出した。


翌日も雨だった。国道沿いの食堂から地元の新聞社の知り合いに現時点を知らせることに

し、私は豊橋郵便局に立ち寄る事にした。豊橋市内に入り有名なハム会社の近くへ

着い頃、急に気分が悪くなってきた。仕方なくハム会社の横のあぜ道に入り芝生で休憩

を取った。目の前を新幹線が走っていた。少し良くなったような気がしたのでまた自転車

に乗った。

古い商店街を通り抜けようとしたその時、美味しそうな柿が店先に並んでいるのを

見かけた。店先の石に腰掛けておばさんとお喋りをしながら柿を口にした。そのまま

自転車を押して豊橋市の中心部を歩いた。このほうが宣伝になるように見えた。

やはり効果があった。皆集まってくれた。頑張ってと言う声援があちこちから耳元

に届いた。

ここから岡崎市へ向かい、繁華街のビジネスホテルに一泊した。

コンビ二に行くとスポーツ新聞の一面が、ある有名な女優さんの事故を報じていた。

人の運命と言うのは明日はわからない、大切な命を守ろう私こそーー。






次は、鈴鹿峠

自転車日本縦断の旅 目次







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     エッセイ集目次

1 私の日常生活

2、薩摩おごじょ

3、国内の旅


4、海外の旅

5、自転車日本縦断の旅

6、普賢岳の千羽鶴

7、阪神淡路大震災

8、私の服飾観


9、命が延びる食生活

10、思い出は霧に包まれて

11、世界で一番大好きな


12、高隈山 戦争


13、松竹梅 一本松